アルバムアーティスト

wondermissile2005-02-13

 最近はネット配信を通じて、それぞれが好きな音楽を曲単位で購入する風潮にある。結果としてアルバム単位で音楽を聴く人が減ってきているように思う。また、コンピレーションアルバムがやたらとリリースされ、またそれなりにヒットするのも、こうした背景と無縁ではないだろう。50年代〜60年代中頃のシングル中心の時代に戻ってきたような感じもする。個人的にはアルバム単位で聴くことが好きだし、アルバムを買って聴いてみて良かった時にはじめて「良いアーティスト」と判断するタイプなので、1曲単位での購入が主流になるのはどうも馴染めない。ミュージック・マガジン2月号で、「優良レーベル特集」というのをやっているが、その中で渡辺亨氏が「現在はアルバム・アーティストという存在、ひいてはこの言葉すらが消えつつある時代かもしれない」と指摘しているが、まったく同感であると同時に非常に残念に思えてならない。ビートルズのSGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BANDやビーチボーイズブライアン・ウィルソン)のSMiLEなどは、アルバム全体を通して聴いた時にはじめてその素晴らしさがわかるのであって、もちろん個々の楽曲も素晴らしいのだが、それを1曲単体で聴くだけではその真価に触れていないのである。
 自分の好きなものだけをチョイスするという行為は、一見自分にとってベストな選択なようでいて、実際は自分の世界を自分で限定してしまっているのだ。食べ物に例えていうならば、子供にその子が好きなものだけを与えたとしたら、その子の味覚は発達するだろうか?結局いろんな美味しいものに出会う機会と感性を失ってしまうだろう。同じように音楽だって、好きなものだけを選んでいては感性は広がらない。偶然の出会いや、すぐには理解できないものを解読する努力が必要なのだ。