対立概念

wondermissile2005-03-09

 josef Kくんのコメントで10代後半から20代前半の頃を少し思い出した。僕の場合も音楽で人生が豊かになったかといえば、経済的には貧しくなり、人生としては豊かになったんだか曲がってしまったんだかよくわからんことになってしまったのだが、今になって客観的に考えてみると、単にメインストリームの健全なサウンドに対するオルタナティブ指向というやつが若い頃にはあったと思う。まあ、今でも引きずってますが。
 山田芳裕(『デカスロン』とかで有名な漫画家)の昔のマンガで『しわあせ』(「しあわせ」ではない)というのがあるのだが、簡単にいうと80年代に青春を過ごした男が年寄りになったころには世の中はやたら健全でクリーンでオーガニックになっていて、80年代の虚無感や退廃や人工的、無機質な感じを懐かしんでは怒るという、なかなか秀逸な作品。それに近い感じもあって、僕自身、むやみに前向きだったり健全だったりするものにふれるとむしろそこに気持ち悪さを感じてしまうことがある。
 また、世の中には背徳感に浸りたい症候群とか、ほんとのワタシは違うのよ症候群とか、すべて社会が悪いのよ症候群とか、アートな人生っていいよね症候群とか、いろいろあって、つい太宰とかに手を出してしまうものである。いや太宰好きですけどね。僕は太宰好きと尾崎好きはすぐには信用しないんです。こういう症候群のひとが多いから。
 何かひとつの概念があれば、それに対立する概念が必要になるものだ。